国分寺市不登校を考える親の会(さくら草の会)
通信249号 2025 11月22発行
次回の定例会は12月27日です。定例会は第四土曜日2時から4時。会場はひかりプラザの予定です。地域を問わずどなたでもご参加ください。参加無料、予約も連絡も不要です。
事務局 石井ひろ子042-502-7558(留守電にメッセージを入れてください。おりかえします。)
教育フォーラム「不登校を考える」
不登校・ひきこもりと地域に求められるもの
~子どもと歩む保護者たちの思いに寄り添って~
【日 時】2019年1月26日(土)午後2時~4時30分
【会 場】ひかりプラザ(203、204号室)
【講 師】広木 克行さん (神戸大学名誉教授)
【参加者】73名
(前回のつづき)その腹痛に頭痛も伴うのが小学校高学年くらいからです。この頭痛、これは相当悩みこんで、その悩みが深まった証拠なのだと思いますが、頭痛を訴え、朝は金縛り状態になって起きられない、そんな子どもたちを何とか学校に連れて行かなければと思って一生懸命なお母さんたちは子どもの表情を見てはっとするのです。小さい時にあんなに輝いていた子どもがお面のように表情を失った姿になっている。能面のような表情を子どもが見せると親は本当にびっくりします。腹痛では済まず頭痛まで行きそして能面のような表情を見せる子どもになるのです。
ここまで来たら子どもをしっかりと抱きしめて「大丈夫ゆっくり休みなさい」と言ってあげてほしいのだけれど、初めて出会うわが子の不登校、わが子の様々な症状、それを見たら慌てない親なんていません。何とかしなければならないと思って慌てる。慌てる親を見れば子どもたちはどう思うか。自分がこんなだから親を苦しめているんじゃないかと思って子どもたちはますます自分を責めますから、頭痛はひどくなるし朝は起きられなくなってしまう。こうして子どもたちが最初に表す助けを求めてくれたシグナルは、そういう体の症状として我々に表してくれるのです。ほとんどの親はその段階で子どもが大変な事態に陥っていることに気付いて相談に来てくださいます。それからの親たちの苦しみのあゆみが始まります。どのステージも個々の親にとって不可欠で、そして非常に価値のあるステージだと私は思ってきました。だって子どもが学校に行かないことがものすごく深刻に思われるのですから、子どもを何とか学校に戻したいと思うのは当然の親心です。
関西で行った講演会でのことです。講演会の後まで残られて話しかけてくれたあるお母さんは「高一の娘が不登校になった時、子どもが社会のレールから外れてしまったような気持ちになり、何としても元のレールに戻そうとして必死でした…。」と話してくれました。私は「子どもが社会のレールから外れてしまった」という話しの冒頭に語られたこの言葉を聞いたとき、その表現の巧みさに感心しものすごく心に響きました。要するに学校というレール以外に社会に出て行くレールがないと誰もが感じているのですね。先ほど石坂さんの話にもあったけど、以前はとにかく学校というレール以外にいろんなレールがあり、人生があるということを目の当たりにしながら大人たちは生きていました。しかし人生のレールは一本しかないように見えている今日の子どもとその親たちの気持ちからすると、不登校がどれほどのショックなのか、その時冷静に子どもを理解して受け入れなさいなんていくら言われたってできないくらい親が混乱するのは当然のことだと思います。
だから多くの場合、子どもを抱えてでも学校に行かせなくてはならない、車に詰め込んででも連れて行かなくてはならないと考えるのです。だって学校の先生も「学校に来れば元気だから連れていらっしゃい」と言う。だからとにもかくにもお父さんの力も借りて、子どもを車に詰め込んで学校に行く。冷静に振り返ってみればなぜあんなことをしたのだろう、子どもに本当に申し訳ないことをしたと思えるそのステージにやがてたどり着くのですが、でも最初からそんなふうに出来るわけではありません。子どもがほんとに苦しんでいる姿を見た親の苦しみの体験の中からしか次のステージにはたどり着きません。私は親たちの話を聞きながらそのことを深く学ばされました。だから今一生懸命苦しんでいる親たちのその苦しみを一緒に考えること、それがカウンセラーにとって大事なのであって、「子どもの将来のためにこうすることが大事ですよ」などと一見分かりやすい、マニュアル的な助言をすることではない。そのことを私は一番教わったような気がします。
そのお母さんはこう言っていました。「親の会に行って『子どもを信じなさい』と言われても何を信じるのかわからず、やはりどうすれば子どもをレールから外れないようにできるのかばかりを考えていました」と言われたのです。とても正直なお母さんで、とっても素敵な表現だと思いました。「そうだよね、そこで親は苦しむんだよね」と、その苦しみを否定ではなくて「ほんとに今が苦しいんだよね」って共感してくれる人がいて初めて、親はもっと聞いてほしいと思って自分の苦しみを言葉にして吐き出せるわけです。そうしないとその苦しみを飲み込んだままの状態を続けるしかない。(次回につづく)
