国分寺市不登校を考える親の会(さくら草の会)
通信243号 2025 5月24発行
次回の定例会は6月28日です。定例会は第四土曜日2時から4時。会場はひかりプラザです。地域を問わずどなたでもご参加ください。参加無料、予約も連絡も不要です。
事務局 石井ひろ子042-502-7558( 留守電にメッセージを入れてください。おりかえします。)
教育フォーラム「不登校を考える」
不登校・ひきこもりと地域に求められるもの
~子どもと歩む保護者たちの思いに寄り添って~
【日 時】2019年1月26日(土)午後2時~4時30分
【会 場】ひかりプラザ(203、204号室)
【講 師】広木 克行さん (神戸大学名誉教授)
【参加者】73名
(前回のつづき)ところがその子どもたちが通う学校の先生たちを見ますと、大人の言うことをちゃんと聞く子に育ってほしいとどうも思っているらしい。大人の言うことを聞く子を求めている学校と、自ら判断して自主的に活動するように励まされて育ってきた子どもたちとの間のずれが小学校低学年から始まっていて、それが子どもたちの中でかなりのストレスになっているらしい。しかも学校が終わったら放課後だから、子どもたちは自分たちの時間だと思っているのだけれど、宿題がものすごくいっぱい出ていつまでたっても自分たちの時間が来ないのです。
学校の現実と子どもの現実のミスマッチ
来月私は宮城に行くのですが、宮城の方で私を招いてくれた人たちが子どもたちのアンケートをとってくれたのです。特に小学校1年生、2年生の子どもたちのアンケートをとってくれると、「学校楽しみに行ったのにつまらない、面白くない、疲れる。」そして6月頃にとったアンケートですけど、「なんで勉強しなくちゃいけないの?」と小学校一年生がそんな声を上げる状況になっています。これはやはり真剣に問題をとらえていかないといけないところまで来ているなということをつくづくと思うわけです。
要するに不登校の激増そして低年齢化と認識できる今の子どもたちの変化は何を意味しているかというと、今日の社会、家庭または保育園の中で育つ、そういう中での子どもたちの育ちと、学校が子どもの中に求めたり子どもに課したりする課題との間に残念だけれどどうも大きなミスマッチ状況が生じていると私は思うのです。先生たちが一生懸命努力しているにもかかわらず、というべきか、時には努力すればするほど子どもたちが追い詰められてしまうそんなケースもあると私は感じるようになりました。
それは学校がいいとか悪いとか、先生がいいとか悪いとかという問題ではありません。構造的な問題です。社会が変わり子どもや親たちの意識も変わる、そして学校もまた情報化社会といわれる中で新しい課題を担わなければならない。子どもたちの問題を前向きに積極的に受け止めていくと、やはり今の学校の在り方をもっと子どもと親の声を聴いてこれをどのようにより良くしていくのかということが非常に大きな課題になってくるのではないかとつくづく思います。私自身研究者としてできるだけリアルに物事をとらえるために臨床的な現場に立って皆さんの声に耳を傾け、子どもたちのカウンセリングを通して子どもの声を聴いてきました。それでもやはり研究者の感性って限界があるのです。
それでいろんな作家の方の本やエッセイを読むのですが、最近いろんなところで紹介しているのが漫画家の石坂啓さんが書いた『学校に行かなければ死なずにすんだ子ども』という大変ショッキングなタイトルの本です。石坂さんは子どもたちの思いをしっかりとらえる漫画家ですけどが、その人が書いたエッセイです。このタイトルの中に私は学校と子どものミスマッチを深くとらえた石坂さんのメッセージを感じました。そこで講演の初めにこの石坂さんの文章を紹介したいと思います。一人の母親として、そして子どもの心を深く読み取る一人の漫画家としてどんなことを感じているのか、そこのところをちょっと読んでみたいと思います。
「子どもが小学校に上がることになったとき、私はあまりうれしくありませんでした。いやむしろはっきりと憂鬱だなという気分になりました。
あーあ、これからいよいよ学校と付き合っていくことになるのか……。
自分がそんなに学校を好きでなかったことと、それは無関係ではありません。(中略)
でも子どもがだんだん大きくなって、就学年齢が近づくにつれて、かなりはっきりとした輪郭でもって、私は学校に対して危惧するようになってきました。
具体的に心配だなァと最初に感じたのは、知人のお子さんたちで『学校と合わない』ケースをかなりの数、聞かされたことです。(中略)
みんな私が尊敬するさまざまな分野の方たちです。いい子育てをなさっていて、子どもたちもまた素直ないい子ばかりです。素直な子ほどなんだか学校にはそぐわないのではと思えるほど、のきなみ不登校を始めたり学校をやめてしまったり。いじめの話ももちろん多く聞きました。(次回につづく)