top of page

国分寺市不登校を考える親の会(さくら草の会)

通信227号 2024 1月27日発行

次回の定例会は2月24日です。定例会は第四土曜日、2時から4時、場所はひかりプラザです。

事務局 石井ひろ子042-502-7558(留守電にメッセージを入れてください。おりかえします。)

 

教育フォーラム

不登校・ひきこもりと地域に求められるもの

 

【日時】2015年2月11日(火)午後2時~4時30分

【会場】ひかりプラザ(203・204号室)

【講師】奥地圭子さん (東京シューレ葛飾中学校校長・NPO法人東京シューレ理事長)

【参加者】48名

 

講師 奥地圭子さんのお話(前回のつづき)

親としても、当時私は教員でしたから、学校の先生の子どもが登校拒否を起こしていると見られているのがすごく恥ずかしくてわざわざ近所の奥さんに会わないように遠くのスーパーに買い物に行ったりしていましたね。今だったらなんでそんなことをやっていたのかと思いますけど、最初の登校拒否との出会いの時は皆さんそんなものだと思いますよ。何をどう考えていいかわからない、ひたすら起きてはいけないことが起きちゃった、って思ってこれは私の育て方が悪かったのじゃないかとか、知られたくないとか、非常に苦しいわけですよね。

私の場合には5、6年前に亡くなられたのですが渡辺位先生という非常に優れた児童精神科医の方がおられて、私はその先生のことを「ひと」という雑誌で知ったのですね。それまでもいろんなお医者さんに行っているのですけど、全然埒が明かない。その先生のことを知って予約を取りに行ったら、3か月待つくらいいっぱい並んでいたのです。やっとその3か月目が来たというのに子どもは医者不信で行かないというのです。それを私が拝み倒して「じゃあ、一回でいいから会わない?」って言ったら、「一回ならいいよ」と行ってくれたのです。私はすぐ、渡辺先生に「この子は一回しか来ないと言っているのですよ」、訴えたのです。たぶん先生は「そんなこと言わないでこれから通っていらっしゃい」、と言ってくださるのじゃないかと思って。ところが渡辺先生はこともなげに「そう、一回だけ会いたいのね、じゃあ一回だけ会いましょう」ってすっと受け止められたのです。そこからもう子どもは安心し始めたのかなと思いますが、初診2時間、とても丁寧に話を聞いてくださって、その話の中にはもう私が「だから学校に行きたくないんだよ」ってわかっている話もあれば、私が良かれと思ってやって追い詰めちゃったのかなと思うこともありました。すっかり気持ちを聞いてもらって、子どもは伸びをして、「お母さん、羽が生えたようにいい気分になったよ。こんな気分は何年振りだろう。お腹が空いた、おにぎり食べたい」って言ったのです。それまでは3か月間食べてもらうためいろんな工夫もしたのにほとんど箸をつけないという感じだったのが、自分からおにぎりを食べたいと言って、昼ごはんに7個あったおにぎりを全部食べちゃって、昨日の夕ご飯は食べられなかったのに、その日の夕ご飯は普通に食べられるようになっちゃったのです。

その時に子どもがとても重要なことを言ったのです。「お母さん、ぼくはぼくで良かったんだね。渡辺先生に会ってそう思ったよ」って。今でいう自己肯定感ですね。その当時自己肯定感なんていう言葉はなかったですけど。その言葉を聞いてはっとしたのは、私や夫が親ですから必死に「何とかみんなのように元気になってほしい」と思っていたのですが、その言葉が表すことというのは、「あんたじゃ駄目よ、早くみんなのようになってよ」って子どもを否定していたのかな、ということに気が付いたのです。渡辺先生のものの考え方と違って、自分が考えていた、「学校は行って当たり前」、「あの学校には問題はあるけど大勢の子は行っているじゃない」、「お父さんやお母さんも学校では嫌なことも問題もあったけど、潜り抜けてちゃんと毎日通って社会人になっているじゃない」「できないのは弱いことじゃないのか」という、大人の側のものの考え方でずっと見て、「これじゃ困るな」とか「何とかしなくちゃ」とか、子どもの側に立って考えてこなかったということが、ぱあっと見えてきたのです。渡辺先生は学校にこだわらないで、その子にとって学校はどうなんだろう、学校との関係でマイナスなことが起きていれば、命の防衛反応として身を守るように学校と距離を取るのは当たり前と気づかせてくれたのです。学校の中で震撼するようなことや傷つくようなことや学校と合わないことがあって、必死になってストレスいっぱいで、もうギリギリだとなれば行かれなくなるのは当たり前だろうと気が付きました。今考えると子どものところに立って教育の問題を考えるのは当たり前なのですけど、当時は子どものことを考えているつもりなのに、大人の都合で考えていたと思いますね。我が家はそのことから変わったのです。子どもも渡辺先生に会って、「ぼくはぼくで良かったんだ」って肯定的に思えるようになり、家の中が変わって、もう「学校に行きたい日は行けばいいけど、行きたくない日には無理に行くことはない」、「そのまま学校に行かなくても親がついているのだから、まあ、人生やっていけるんじゃないか」と思ったのですね。そこで家の中の空気が変わって、子どもは非常にのびのびとし始め、のちに大検(大学受験資格検定)を取って大学生になり、大学院生になり、今では自分が子どものころの夢だった科学者になって、結婚もし、子ども、つまり私の孫もいます。そういう苦い体験の中で、非常に重要なことを学んだわけですね。

(次回に続く)

bottom of page